📄Headline
語学を学習する大きな意味の一つに、意識の選択肢が増えるということがあると僕は思っている。
もちろん、外国語を習得することはシンプルに便利だ。さまざまな言語を身につけようといろいろ手を出してきたのにもかかわらず、今の僕が操れるのは日本語と英語しかないのだが、それでもやはり英語が使えることは現実的になかなか助かっている。まず、カナダで心地よく生活ができる。情報を得ることができ、友達を作ることができ、本を読むことができ、買い物や食事をすることができる。日本語しか話せずにカナダのど田舎に来ようものなら、それはそれは悲劇的なものになっていたに違いない。
それ以上の意味が、語学を学習することがある。それは今ここにある表現形態とは違う、もうひとつの表現形態を選べること。翻っては、自分が持ち合わせている世界とは違う世界が存在していることを知ること。今いるハイダグワイの地で先史時代から話されてきたハイダ語を学びながら、そのことを強く感じている。
今学期のハイダ語の授業がやっと終わった。クラスメイトは村のおばあちゃんと僕のふたり、そしてインストラクターというド少人数制学級だったが、なんとか試験を乗り越えることができた。小さな教室で、おばあちゃんの英語をなんとか受け止めながら、一緒にハイダ語を勉強して改めて思わされた。ことばというものはその地の哲学や世界観と密接に結びついている、と。
「ことばを知りたいという衝動は、『あなたを知りたい』というラブレターみたいなものよね」ひとりの聡明な友人がそう言っていたことを思い出す。今僕が抱えていることばでは表せない、あなたの世界を見せてほしい—言語を掘り下げていくことで、この地に息づく文化に、生を営み人々に、そう伝えられないものだろうか。
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🌱Weekly Report
今週の週報を公開しました。
ハイダの木から世界を望む【ハイダグワイ移住週報#18】
博物館でいつも通り働いていると、突然日本語で声をかけられました。ハイダ族の製材会社とともに、ハイダの木材産業をいかに持続的に発展させるかに取り組んでいる日本人。FBやnoteで見つけてくれたのだといいます。カナダ開拓の歴史、そして先住民迫害の歴史と切っても切り離せない林業。業界の中の人から聞ける話はとても新鮮で、勉強になりました。
noteで全文を公開しています。タイトルまたは以下ボタンをクリックしてご覧ください。
🌷More To Read
外部メディアでの新着記事。
文化はその道を見出す│最果ての地・ハイダグワイからの手紙
Webメディア「TABI LABO」における連載の新作記事が公開されました!
連載においては、日々の記録的に書き続けている週報記事とはスタンスを変え、ひとつのテーマを掘り下げて「書き直す」営みを続けています。今回はハイダ族をはじめとしたカナダ太平洋岸の先住民文化の真髄ともいえる儀式「ポットラッチ」について。
「文化はその道を見出すんだよ(Culture finds its way)」とひとりの長老が言っていたことを頑張って咀嚼して書いています。
📚We Are What We Read
最近読んだものをシェアします。
INTO THE WILD(荒野へ)
著:ジョン・クラカワー
外国語で本を読むというのは、素敵な体験だ。
ずっと読書リストにあった本を読み始めた。ジョン・クラカワーの「INTO THE WILD」。日本語版は「荒野へ」というタイトルで翻訳が出ている。アラスカを夢見る人々のあいだではクリシェのような一冊だが、これまで手に取ったことはなかった。村の図書館で見つけ、クリスマス休暇のために借りたのだ。
主人公はクリス・マッカンドレスという若者。全てを捨て、たった一人でアラスカの荒野に分け入った彼が、大自然の前に力尽き、無残な死を迎えるまでの心の軌跡を鮮やかに描いたノンフィクション大作だ。打ち捨てられたバスの中で餓死した彼の遺体とともに発見された日記から、筆者はクリスの足跡を辿り、なぜ若者が前途有望なキャリアを捨て自然の中に歩みを進めたのかを探っていく。(このあらすじはすべて表紙に書いてあるのでネタバレではありません)
基本的に翻訳の出ている海外文学は翻訳版で読むことにしている。日本語でものを書くことを望んでいる以上、できるだけ日本語に触れていたいと思っている。ただ、そんな悠長なことを言っているとカナダの辺鄙な村で読書なんてできないので、こちらにきて手に取る本はもっぱら英語の本になっている。
そんな大きな読書スタイルの変更を通じて、ひとつ学び取ったこと。それは、外国語で読書するにはある程度の疾走感が必要ということだ。僕の英語力なんてたかが知れているので、身に覚えのない単語がパラグラフに必ず顔を出してくる。そこでわざわざケータイで意味を調べようとするから読書モメンタムから外れてしまうのである。本を読んでいてわからない単語は勇気を持って無視する。文脈から推察する。大事な単語ならまたどうせ顔を出すのだから、本当にノー・アイデアならそのときに調べればいい。
英語力アップのため、とかいう理由で律儀に単語をいちいち調べたりしていたから、これまで外国語の本に苦手意識があったのだ。果敢に無視し、本を読む勢いを殺さないこと。そう吹っ切れてからというもの、外国語で原文を読めるというのはなんとホクホクした営みなのだろう、と思えるようになった。さ、これを書き終えたら一気に数章読み進めてしまおう。
☕️あなたの日記を送ってください
僕の周りのひとびとの生活を紹介します。
2023/12/01 神奈川県 小田原市
畑にのびた花の写真を撮っているとお家の人が出てきて、それはダリアの一種だと教えてくれた。そのままなんとなしに2人で高台を歩いた。
海を見下ろしながらその人は、水平線が真っ赤に染まったら目を覚まして、また水平線が真っ赤になる頃に夕飯を作り出すのだと言っていた。
せっかく街に新しい家を建てたのにその暮らしが愛おしくて、もう5年も新居を放置しちゃっているんだとも言っていた。都会がとか、田舎がとか、そんなのはもう何でも良くて、ただただ俺もそうやって宇宙を目印にして、地球の上で生きていきたいと思った!
12月4日の日記送ります。
11時くらい(起床)。日記をまとめていっぱい書く。ほたる茶屋でお土産のお願い。定休日なのに対応してくれる。おまけもすごい。この精神性は見習いたいけど見習ったら破産しそう。丸久ラーメン。ラーメン、焼きめし、ギョーザ。うまい。そしゃくしない。
先週日記を送ってくれたみなさん、本当にありがとうございます。最高ですね。少しだけ紹介させてもらいました。やはりもっと日記を書いて見せ合っていきたい。普通に友達の日記読めるの面白いし。
ということで、引き続きあなたの日記を送ってください!僕がニコニコできるので。来週のメールでも少し紹介します。(公開しないでねという場合はそう記載していただければと思います。僕が一人でニコニコしながら読みます。)
今日は村のおばちゃんズとクリスマスディナーです。みなさんも良いホリデー・シーズンをお過ごしくださいね。それでは。